「大岡裁き」の意味を90%の人が理解していない?!

業界のご意見番・小森勇の一喝 第33回

「大岡裁き」の意味を90%の人が理解していない?!

事件の本質を見据えた前向きの解決策、「大岡裁き」

江戸時代の大岡越前という名奉行の、お白洲での裁きが「大岡政談」として今に伝わります。どうも裁きの場で裁いたのは、実際は非常に少なかったようです。にもかかわらず沢山の名裁きが美談として講談で残っているのは、いろは組火消制度、小石川施薬院の設置等に、幕府の司法官僚として多く携わり、江戸市民から高い評価をされ、講釈師によって次々に美談が創作されていったからでしょう。そう言った歴史考証は一旦おいといて、今回は作られた美談としての大岡裁きを考えることから始めましょう。

旧約聖書の第一列王記3章に一人の赤子をそれぞれ自分の産んだ子だと主張する二人の遊女が、ユダヤのソロモン王の前で決定を請う物語が記されています。その時ソロモン王の下した決定は、「剣をここに持ってきなさい・・・生きている子供を二つに断ち切り、半分をそちらに、半分をこちらに与えなさい」というものでした。真実の母親はその時「その生きている子をあの女にあげてください。決してその子を殺さないでください」と王に申し立てました。これにて一件落着。

大岡越前守はもちろん旧約聖書など知る由もありませんが、このソロモン王の素晴らしい裁定に比肩されるほど、南町奉行として江戸市中の政事に人気が高かったのでしょう。このように、大岡裁きのエッセンスとは、決して“足して二で割る”式の折衷案では決してなく、事件の本質を見据えた前向きの解決策と定義致しましょう。

ホールがメーカーを訴えたところで、報いは得られるのだろうか?

こうして今年の1月23日の全日遊連理事会における小柳課長講話から始まった、わがホール業界の正常化への強力な指導を、仔細にずーと読み込んでくると、見えてくる結論は優れて「大岡裁き」であると言わざるを得ません。しかし、この「大岡裁き」の本質を業界の指導者である方の中にもお分かりでない方、また各ホール営業所単位では90%の方が理解されてないと思います。そこで、お分かり頂き易いように、図式化してみます。

※民法であれ、刑法であれ、訴えられた方に責任を負わせるためには、以下のような事項が証明されなければなりません。

❶ まず「損害」とは、納品されたぱちんこ台を自らの意思と異なるカタチで、新台と「差し替え」ねばならない事。その際ホール側は「幾ばくか」の出費も予想されること。及び〈もっと使えていたかもしれないのに、時期を早めて外さなくてはならないことによる苦痛?〉が発生しそうなこと。

❷ 「損害」の原因を作った側として「ぱちんこメーカー(及びメーカー団体である日工組)」が措定(そてい)されている。(ホール側にも「釘曲げ」したという損害原因があるかもしれないが、一旦ここでは議論しない)

❸ 「損害」の発生があるとしても、その損害に至る過程に「違法性」が有るのかどうか? つまり検定釘と違う状態で納品されたことが、〈必要かつ止むを得ざる「緊急避難」であったのか? あるいは「納品した側」に「正当防衛」といえる事情が認められるのかどうか?〉

❹ いちおう「違法性」が有ったとして、その「違法行為」と「損害」との間に因果関係が認められるのかどうか? が問われます。

❺ 最後に「損害」「加害者の認定」「違法性」「因果関係」がすべて認められたとしても、「責任」を背負わせられない「やむを得ない責任阻却事由」があれば、損害賠償(刑罰)に問われません。これは分かりやすく言えば「加害者側」にとって、「他の行動をとることが不可能であったのかどうか?」を審査することになります。

では、順に見ていきましょう。ちょっとお付き合いください。

ⅰ.「損害」「被害」として、ホールが該当機種を外して新台と差し替えなければならないことが、どのように「損害」「被害」なのか?

ⅱ.ホールに「損害」を与えたものとして、「ぱちんこメーカー」が本当に「加害者」なのか? 検査機関である「保通協」がそのような機械を検査合格させた行為は何らかの「加害」主体とならないのか?

ⅲ.検査合格時と納品時の「釘」状態が異なる可能性が有るとされることは、違法状態であると思われるが、ホールも「釘曲げ」等によって更にその「違法状態」に「加担」したことが有るとすれば、メーカーのみの「違法行為」と断定してよいのかどうか?

ⅳ.「因果関係」についても、ホールによる「釘曲げ」「釘調整」という違法行為が競合してきた場合、はたしてメーカーのみに「因果関係」を全て負わせることができるのか?

ⅴ.「責任阻却事由」としての、「加害者」とされる側に「他の手段を選択することが全く期待できない」という状況があったのではないか?

以上の5項目が審査されていくことになります。しかし、この5項目の審査、証明には多くの時間と費用が掛かりそうです。仮に本式の訴訟手続きに成ったとしても、1年や2年は楽にかかると思いますし、証人尋問等で多額の訴訟費用を要します。判決が出た頃には、訴えた方も訴えられた方も歳をとり、しかも時代はどんどん急ピッチで進んでいきますから、判決でいくばくかの賠償金を勝ち取ったとしても、「いまさら…」の気持ちになる可能性の方が大きいと思います。

そこで民事では裁判所による「和解勧告」という方法が多く用いられます。また刑事でも米国のように「司法取引」と言って、自分の罪を積極的に申告することによって、他の加害者の罪の詳細を当局に提供し、自分は責任を免れるという手法があります。

今年当初からの行政による指導は現代版『大岡裁き』!?

私が思うに、今年当初から霞が関=警察庁により、度重なって強く指導されている流れは、まさに現代版の『大岡裁き』ではないでしょうか!

・ホール側に全く非は無い! 全てメーカーのやったことだ、「リコールだ!」と果たして言えるでしょうか? 裏を返せば〈ホールは純朴な子羊だ、検定機とは異なる惧れがあるなんて知らなかった!〉と、声を大にして主張できるのでしょうか? 『役物比率』という規制があることなど知らなかった! と、ホール団体の幹部が言うことは、無知の誹り(そしり)を免れないのではないでしょうか?

・ホール団体の幹部の方ですら、「賞品等価交換」と、「業界等価買取り」を混同して理解されていたことを、どう弁明するのでしょうか?

・ホール団体の幹部のお店の中に「業界等価買取り」をつい先日までやってらっしゃった事実を、どう弁明するのでしょうか?

・ホール5団体の中には最大手企業を含め、錚々(そうそう)たる企業がその団体幹部をされています。つまり全国組織である「全日遊連」の会員でありつつ、他の4団体の幹部企業でもある、という重層構造になっています。各団体の中の大手企業様がこれまで「業界等価」を主導してこられたこともまた「暗黙の事実」でありましょう。従って仮りに、全日の幹部の方が〈自分たちはこれまで極端に業界等価仕様の機械を造ってくれと言った覚えはない〉と仰ったとしても、組合員の中の大手企業が、そうした「業界等価」向けの機械を欲してきたことまでは、否認することはできないと思うのです。

※つまり「原因者」「責任者」論を進めても、突き詰めようもないと思うわけです。

・メーカーも企業として売れる機械を開発、販売していかねばなりません。でも、メイン機種を5~10万台も売ろうとなると、いきおい大手企業から案件台数を取りまとめてから生産台数を確定するという流れになることは、否定も肯定も致しません。

※ホントは、大手企業の方ばかり向いて機械を造っている! という風潮は問題大アリなのかもしれませんが、現実的には一概に否定できない面もあるのではないでしょうか?

・ところが「ホントはイケない!」業界等価仕様の機械を開発しようとすると、保通協検査にある『役物比率』の壁にぶち当たります。この壁は極めて険しい壁であるが故に、検査に合格しようとするならば、〈とんでもない変な釘にして〉保通協に持ち込むしかない、という現実が、今回白日の下に明らかになってしまったわけです。

※ここだけを切り離してとらえると、「ホレ見たか、メーカーが悪いんじゃ!」と成ると思いますが、メーカーは単独でそんな“イケない”試みを、危険を顧みずすると思いますか? 市場がそういった「等価仕様」の機械を切に欲していたからこそ、そうした試みを行って来たのだと思います。別にメーカーを弁護しているわけでは全くありませんが。

※「イヤ、そんな無理までして等価向けの機械を通さなくていいんだ!」。これは確かに正論です。しかし、例えば今年春にマルホンから出た『野菜畑7個賞球』の機械は間違いなくトータルベースが40を超える機械で、非等価向けの機械でしたが、組合員の方は殆ど買われませんでした! この機械は全日の幹部の方の提唱で造られた機械だと思いますが、同じ全日の幹部の方のお店は殆どと言ってよいほど買われませんでしたよね! せいぜい買ったとしても、3個賞球のタイプでした。

これが現実です。

メーカー、ホール、監督官庁の三者が恩讐を超えて知恵と力を出し合おう!

こうして概観してみますと、今日ここまでパチンコ遊技客数が減少し、玉単価も“異常”と言えるほど上がってしまった流れは(決して肯定できるものではありませんが)必然性のごとく来てしまったものだと、なかば諦観せざるを得ないと思います。時計の針を20年前に戻して、「業界等価」など無かった時代に振り出しに急に戻せるか? と言っても、拙速には戻せないでしょう。

さすれば、この一連の20年の経緯を、霞が関は『全て御見通し』であります(笑)。

であればこそ、ここで20年前からの誰それの責任追及を激高して叫ぶよりは、前向き思考で、早急に「改造」していくには、粛々と来年メーカーから出てくる「検定通過機」と同一の機械で、かつ営業に供することのできる機械と、“差し替えて”行こうではないかと指導されているわけです。

すぐれて、平成の業界の『大岡裁き』だと感じます。

ⅰ)過去の「業界等価」の咎は問わない

ⅱ)過去の「検定通過時と異なる」ゲージの問題は問わない

ⅲ)過去のホールによる「釘調整」の問題は問わない

そして最後に、

ⅳ)「業界等価」の高射幸的営業で、大衆娯楽の本則から離反し、1,000万人にまで落ち込んでしまい、“失ってしまった”ファンの回復に、メーカー、ホール、監督官庁の三者が恩讐を超えて知恵と力を出し合おう!

これが、今回の大岡裁きです。

これにて一件ラクチャ~ク(笑)。

 

カテゴリー: パチンコ,業界動向

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