「粗利益」を考える。 ~ 基本“思想”の根本的見直し ~

業界のご意見番・小森勇の一喝 第48回

「粗利益」を考える。 ~ 基本“思想”の根本的見直し ~

全国のホール及びメーカー、設備企業等の皆さま、お疲れ様でございます。年末までに「検定機と異なる可能性のある」ぱちんこ機の回収・撤去に向けて粛々と一致協力して推進していくべく、最大の努力を傾注されている事と存じます。当初、一部で懸念された「メーカーの一方的責任だ」論が独り歩きすることも無く、遵法営業の徹底に向けて「検定機どおりの機械」に順次差し替えが進んでいる事に、業界コンサルタントの一員として深い敬意の念を抱いております。

ただ、一つだけ“喉に引っかかった棘”のような“恨み節”がときどき聞こえてきます。

やれ「売上が下がる一方なので、粗利も下がるばかりだ!」
やれ「これ以上粗利が下がると、もうやっていけなくなる!」
やれ「ここまでパチンコの稼働が下がって、ベースが上がってくると粗利がますます取れなくなる!」

今日は、これらの言葉について哲学的に考察してみたいと思います。

❶ 「粗利益」とは何か?

業界人は普通に「粗利(あらり)」と言ってますが、会計用語ではこれを「売上総利益」と言います。一般用語に直しますと〈売上に伴って戴ける、商品の魅力利益〉と言って良いと思います。「商品の魅力利益」といってもピンとこないと思いますので、3つに因数分解して具体的に見ていきます。

ⅰ)商品の魅力利益(その1)――「商品そのものに込められた、価格と価値の魅力」
ⅱ)商品の魅力利益(その2)――「商品を手にする場所自体の魅力」
ⅲ)商品の魅力利益(その3)――「商品が置かれてる(口にする)雰囲気の魅力」

の3方向から「粗利」とは何なんだろう? と考えてみたいと思います。

まずは、ちょっと高そうな商品の代表格として、ルイ・ヴィトン(vuitton)を取り上げてみます。(※ 断っておきますが自分もvuittonの財布やバッグを十個以上持っているvuittonファンです)

11万円のvuitton財布を娘にプレゼントするとします。正直言って内皮で外が塩化ビニールの素材だけとってみると1万円でも創れるんじゃないでしょうか? でも30年以上百貨店の一等地で売られて来た“ブランド価値”が体に刷り込まれているので、高いからこそ娘に喜んでもらえるという父親のはかない期待感で、クレジットカードをきるのではないでしょうか? あのモノグラム柄、ダミエ柄、エピ柄などには、各時代で一世を風靡した思い出とか、毎年のニューデザインの探索興味とかの時間軸も、商品そのものの様に織り込まれています。

従って、11万円の財布の「粗利」が仮に7万円あったとしても、購入者からボッタクリだと返品依頼が来ることは有りません。

次にマクドナルドさんについて考えてみたいと思います。最近マクドさんの“凋落”が目立つと、あちこちで言われます。もう日本で45年間ハンバーガーやフライドポテトを食べると言う“肉食文化”のパイオニアであった事は誰しも否定できないでしょう。マクドで育った30~40代の親の子供も、順調にマクドが食生活の中に完全に組み込まれて、マーケットは更に拡大する“はず”でした。ところが危険な衛生管理の外国産の鶏肉を使用している画像がネットで拡散してより、急激にマクド離れが起きてしまいました。それと一時期100円ハンバーガーを商品化して、一瞬売上げを微増させたものの、結局本来の妥当な値段に戻したことで、再び急激な売上低下の流れが止まりません。

マクドのハンバーガーが生活の一部であるうちは、価格と価値とに変わらぬ安定感があるのですが、生活の一部から離れてしまうと、いわゆる「良客」が離れていき、“好ましからざるお客”の比率が高まって、更に「良客」がマクドから離れて元に戻すことは至難の業に成ってきます。

ここで、中間の答えを言いますと、

【粗利を決めるのは、店ではなくて、『お客様』である!】という決定的な真理です。そこには【粗利を“抜く”という発想は微塵も存在しません】。経営学の本を見たら【粗利率は、お客の支持率である】という趣旨の事が必ず書かれている筈です。お客から支持されるアパレルブランドの粗利率は50%あるのは当たり前で、少々値段が高くても身に着けているお客はそれを誇らしいと思っているうちは、誰も消費生活センターに苦情を言おうとは思いませんよね。でも何故か、わがパチンコ業界では昔から「粗利を抜く」と言いますし、粗利率を決めるのは「お店である」とほぼ全員が思っています!

 

「粗利は店が決めるのではなく、お客の支持によって決められる!」という経営学の根本原則に学ぼう

❷ 本来ぱちんこ店の経営者であれば、お客がたくさん入っていて喜ばない人は一人もいない筈ですよね。また客数がどんどん減っていくのに「ウチは利益がとれているから人数が減っても構わないんだ」という経営者は本来いらっしゃらない筈ですよね。

にも拘らず、一部の有力コンサルタントはそこで【利益あってこその経営だから、そんな薄利営業じゃダメだ!】という言葉を金科玉条のように持ち出します。

※ ぱちんこメーカーが、店側の粗利追求に応えるカタチで

a )スタート賞球を、5個 → 4個 → 3個(一部の甘デジにあっては1個賞球)に下げ、
b )一般入賞口に“ほとんど”入賞しないようなゲージ構成の機械を販売し、
c )B(ベース)値は17~18という様に、“抜きやすい”ぱちんこ機が、この10年間で主流と言うか、当たり前になって来ていた。

以上の3点により、一部の有力コンサルタントの発言は、実に重みを持って受け入れられてきたというのが事実でしょう。

2000年に決算発表した㈱ダイナムの発表数字を見て、多くの人が何も言えずに溜息をつい
たことを、今のマネージャーの殆どはご存じないか、忘れてしまっていると思います。

ぱちんこ平均稼働40,000発、玉粗利10銭
スロットは(稼働は忘れましたが)コイン粗利20~22銭

ところがつい最近まで、コンサルタントの口からは、(4円Pで)玉利20~30銭、20円Sでコイン粗利40~50銭という発言が“平気で”出ておりました。また本部長、エリア長、マネジャークラスまで“平気で”同様の発言をサラッと為さっていたと思います。根底には「どうせ稼働伸びる見込みは薄いのだから、稼働を取るか? 粗利を取るか? と成ったら、粗利をとるしか方法は無い」と言う、なかば開き直りともいうべき論理が通用してきたという事でしょう。

真の業界人であれば、玉粗利30銭とか、コイン粗利50銭などという言葉は、本当は恥ずかしくて使えない筈です。そのためには、「稼働は再び伸ばせる!」という哲学に立脚するべきだと考えます。「粗利は店が決めるのではなく、お客の支持によって決められる!」という経営学の根本原則から学ぶべきだと思います。

商売の原点は「稼働を伸ばす」 = お客の来店回数なり、滞在時間を伸ばす = お客の支持は獲得できる! という「信念」を持つことから始まります。

幸い、この10月から導入が始まった4個賞球の「沖海4」は、導入初週の玉粗利が0.02円(2銭)だったと聞き及びます。海物語の全盛期であった2003年頃の新海の全国平均玉利は8~9銭だったと記憶しています。あの当時、新海は普通に全国平均で40,000発飛んでいました。あの時代を、(当時とは違った意味で)再現しようと言う業界人の熱意を感じます。希望を失ってしまったら「この世は闇」です。にも拘らず、また先走ったコンサルタントは「1/348の沖海3と比べてベースが高い分爆発力の劣る分、厳しい!」という論評を早速発表されます。こういうカタには、業界愛が無いんでしょうか?

※ モデル店として「日拓エスパース歌舞伎町店」の沖海4と海ジャパンを見に行かれると納得されると思います。ここも「海」に関しては、8月までは沖海3で(マルハン東宝ビル店を凌駕する)バリバリの稼働を付けてましたが、沖海3を撤去した今も、稼働は変わらないばかりか、むしろ伸びています。日拓さんというと、“粗利率が高い”という先入観があるかもしれませんが、実はここのところ従来から見たらかなりの薄利で営業されて、それがまた顧客の支持拡大に貢献しています。

眼鏡チェーンの原点に立ち返った「メガネスーパー」

❸ ちょっと脇にそれて「メガネスーパー」さんの“復活”兆候について触れたいと思います。自分も実は35年間メガネスーパー一筋の愛好者なのですが、ここ8年間残念なことに連続赤字決算で潰れそう! と言われてきました。J!NSやZoffさんと言った、もっと安価な眼鏡を提供するチェーンとの競争が厳しくなって、安売り競争に自ら巻き込まれ、自社の戦略を見失ってしまっていたというのが根本的原因です。

それが眼鏡チェーンの原点に立ち返り、中高年の一人ひとりの眼の状態を正確に測定し、鼻の高さやフレームの両耳への最適フィット感とかの個別のコンサルティングをキメ細かに行い、買われた顧客の購買後相談にも真摯に乗ってあげるという販売スタイルにチェンジしたことが、これからの時代にぴったりマッチして来たと言うのが、売上、粗利の上昇カーブに繋がったという事です。目の良い方にはまだピンと来られないかもしれませんが、目と歯の悩み程、他人に分かってもらえず、かつ健康に極めて重要な「病い」です。例えば歯が4本抜けてしまってインプラントしか方法が無いと宣告された時、たとえ120万円程かかろうとも、生きていくためにはヒトは行動を起こすでしょう。

また遠視、乱視が進んで前がよく見えない事ほど憂鬱で、かつ運転にも危険なことは有りませんよね。にも拘らず、眼科医に行っても、眼科医が最適な眼鏡を作ってくれるわけではなく、また街の眼鏡チェーンで見てもらっても、どうせ眼鏡を買い替えさせられるだけで、自分の眼球の具合の根本的診断なんかしてくれる筈がないという、なかば諦めの巨大マーケットがそこに存在するのです。

自分も先日、東京白金台の「メガネDOCK」で1時間以上かけて症状を細かく相談し、結局12万円程する遠近両用の超薄型で、軽いフレームの眼鏡を作ってもらいましたが、全く満足しています。自分は眼鏡歴49年のベテランですから(笑)、少しでも高く売らんが為のセールスなど一発で分かります。本当に眼の将来のためのコンサルティングを始めて受けられて、さすが! と納得しました。仮に12万円の眼鏡の粗利益が5万円ほど有ったとしても、全く文句を言おうなどとは毛頭考えません。やはり粗利は「お客が決めてくれる」ものだとつくづく思います。

業界における「夜明け前」であることを固く信じて…

❹ 私は、この10月以降のぱちんこ新基準機が、徐々にお客様の支持を獲得して、4円ぱちんこで14,000発近くまで一旦落ちてしまった稼働を伸ばしてくれると予感しています。その最大の理由としては10月以降のホールの直近の現実です。正直言って今日本の10,000店舗のうちで、MAX機が36,000発以上稼働していると言う店が、いったい何軒あるでしょうか?

ベース値が30以上で、確変継続率が65%以内というスペックは、ついこのGW前の「過去の」機械と比べると、「ある意味、スペックdown」という見方にもなるでしょう。しかし、その反面今までより玉持ちが良くなって、深いハマりに落ち込んで痛い思いをすることが、相対的に減ることもまた事実です。この新基準機をお客様に支持して頂けるよう、全力で創意工夫することが今最も為すべきことでしょう。「夜明け前」であることを固く信じて。

❺ 最後に成りますが、20年前の機械をフト思い出してみたい。CRで無かったことで売上のちょろまかしが有ったと言う見方もされますが、一方で、スタート賞球7個返し、ベース42位の機械でしたが、ちゃんと台粗3,000円以上は頂けていたと思います。その訳はノーパンク = 無制限営業ではなくて「ラッキーナンバー制」であったこと、「100円当たりの賞品玉個数が40玉だった」こともまた厳然たる事実です。台の移動自由が当たり前と成っている今日、今さらラッキーナンバー制の採用は実際問題難しいと思います。しかし「出玉共有」については、再考・見直しは大いにアリかと思います。げんに夫婦。アベックで出玉共有というシーンじたいが、殆ど見られなくなっているからです。「なんでも自由」と言うのは、本当にお客のためになっているのか? 見直す良いチャンスじゃないでしょうか。

また交換個数40個までは行かないまでも、「業界等価」が理論的に違法であることが証明された今日、30玉交換や、33玉交換への“回帰”は充分あるし、既に一部の県ではそれを見据えて次の準備に極秘に入られているとも聞き及びます。

兎にも角にも、今回行政当局のお力添えも有って、遊技の根源に関わる価値観の大転換が成されつつある訳ですから、もう一度、パチンコ遊技における「粗利益」とは一体何ぞや? の議論を大いに為されていくことを期待したいと思います。

ハッキリしている事は、釘調整と遊技台の傾斜によってお店が「粗利」をコントロールできるという、(他業界には見られない)前代未聞の価値観が否定されている! という事を、早く多くのカタが理解していただくことだと思います。

カテゴリー: パチンコ,戦略・戦術,業界動向

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