『のめり込み問題』の本質考察 ―― その1

業界のご意見番・小森勇の一喝 第56回

『のめり込み問題』の本質考察 ―― その1

今年のパチンコ業界における最大の課題とは……??

昨年末までは[検定機と異なる可能性のある(ぱちんこ)遊技機]の回収。撤去こそが、業界の最大のミッションであった事は何人も疑う余地のない事ですね。それほどの“一大事”をなんとかほぼ100%成し遂げ、正直ホッとしたところです。さあ次に今年は《スロットの規制実施か!?》と大多数の業界人が思っていました。

ところが今年1月20日の全日遊連全国理事会での警察庁の小柳課長のご講話、また一週間後の26日の9団体連絡会議における津村課長補佐のご講話では、それぞれ【依存(のめりこみ)問題】への業界の対処が、最大の講話骨子であったと云っても過言ではありません。変な話しかも知れませんが、この【依存(のめり込み】問題】と比べれば、パチスロの『新基準に該当しない〈回胴式〉遊技機の設置比率30%以下へ』の問題は“影が薄くなる”と云ってもよいかもしれません。

しかし“いきなり”【依存(のめりこみ)問題】と云われたところで、私も含めて“業界人”の多くにとっては“水鉄砲を食らった鳩”のような気持ちで、いったい何が起こったのか? というのが正直偽らざるところでしょう。

※ただ是非とも知っておかねばならないのは、2001年頃から一部のホール関係者の呼びかけで「依存問題」が問題意識として熱心に取り上げられ、その結果監督官庁主導ではないカタチで、2006年のRSN(特定非営利活動法人リカバリーサポート・ネットワーク)の設立に至った、という事です。そして2014年には今度は日遊協の中に「依存問題プロジェクトチーム」が設立され、熱心な討議・付帯的提案を経て、2015年2月に、21世紀会の中の「遊技産業活性化委員会」は、『パチンコ店における依存(のめり込み)問題対応ガイドライン』と『対応運営マニュアル』を正式に決定していることを、再度しっかり認識しておく必要が有ります。

今後は「風営法」と「ギャンブル等依存対策基本法(仮名)」の二つの法律で管理監督される!?

❶ 前号の「一喝(55)」では〈依存問題の“着地点”はどこら辺りなのか?〉という雑文をいち早くUPしてみたのですが、その後2月20日のPCSA公開経営勉強会を取材してみて、「一喝(55)」の考察がまだまだ“従来的な業界発想”の枠に留まっていることに気付かされ、恥ずかしくなって、この「一喝(56)」を書かねばならぬとの気持ちが迫ってきました。

これから、従来の発想と根底から変わってくることは、次の通りです。(以下から❶の段落最後まで)

★これまでは「風営法」の体系と、監督官庁である警察庁から出される通達、所轄の指示を「遵守」していれば“世間から”どうのこうのと云われる事無く営業を続けられたわけです。

➡ところが、「IR法」が昨秋国会で採択されたことにより、将来できるカジノ対策の一環として〈ギャンブリング障害の予防と予後対策〉〈未成年者のギャンブルへの参加のおそれに対する一層の対策〉が、警察庁以外の他の省庁(=ex.厚労省、文部科学省etc.)や自治体(=都道府県・市町村)からも直接に指導・監督を受ける可能性が極めて高くなってきてしまったわけです。

※「IR整備推進法」成立の際の「附帯決議」において「ギャンブル等依存症」対策に関する国の取り組みを抜本的に強化するため・・・仕組・体制を設けるとともに、関係省庁が十分連携して包括的な取組みを構築し、強化することを明記。

注意すべきは〈カジノにとどまらず、他のギャンブル・遊技等に起因する依存症を含め〉ての総合対策であること。

※今国会において、維新の党から「ギャンブル等依存対策基本法」(仮名)というのが提出され、可決される見込みが極めて高いと言われています。

つまりこれからは我が業界は、「風営法」と「ギャンブル等依存対策基本法」の二つの法律によって管理監督されることになるわけです。

★これからは「依存(のめり込み)問題」に関して、関係省庁が連携せねばならぬことになるわけですから、警察庁もパチンコ業界を主管する省庁として、他の省庁から〈明確で、数値として目に見える対策と、その効果が求められる〉ことになります。つまり、風営法上は明記されていない「依存問題」が、これまでの「自主的対策」の次元から、行政から明確な成果を求められる「法的責務」に“格上げされる”ということです。

★併せて、これまでは県条例に営業時間の規制が無い限り、理論上は日の出から24時まで可能であったわけですが、今後は〈のめり込み防止〉の観点から次々に都道府県条例が改正されて、営業時間の短縮に向かっていくのではないか、と予想されます。

※宮城県では朝7:30~営業している所も有ります。また山口県では一部の店が組合を脱退して24時まで営業しています。こんご営業時間についても“世論”“世間の目”が厳しくなる方向に進む可能性が有ると思います。

パチンコ“依存”や“障害”ではなく『のめりこみ』という用語を、業界人全員で共有できれば…

❷ 次に、しっかり押さえておかねば成らぬのは、『用語』の問題です。

IR整備推進法には、「依存」「射幸性」「広告規制」「入場管理」との用語は明記されていないのですが、「附帯決議」の方には「ギャンブル等依存症」「依存症患者」の言葉が既に使われています。

「ギャンブル等依存症」なる事柄については厚生労働省が主管と成りますので、どうしてもWHOの『ICD-10』とか、アメリカ精神医学会の『DSM-5』に規定する医学的定義や基準の概念による検証抜きには議論は全く進みません。そうは云っても、我々パチンコ業界プロパーの人間にとっては、そのような医学的用語にはチンプンカンプンなのが実情です(笑)。


ICD-10(International Statistical Classification of Diseases and related health problems 10th edition=疾病と、関連保健問題の国際統計基準 第10版) by WHO

DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of mental disorders – 5th edition=精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版) by 米国精神医学会

「ギャンブル依存症」「パチンコ依存症」という言葉がいつの間にかマスコミを通じて一般化しつつあります。また国会の場でも議員さんたちが「依存症」「病的賭博」という言葉を使われている様です。しかし、こと医学的な診断抜きには何も語れない問題のはずですから、私たちは『用語』を正しく用いるべきでしょう。まして我々パチンコ業界は、もろに“民間ギャンブル”として世間から名指しされるわけですから、これに対しては「正しい用語法」で向き合うべきだと思います。

この点に関し、RSN(リカバリーサポート・ネットワーク)の西村直之(代表理事)は、世界で最も精神医学の進んでいるアメリカの、DSM-5では「病的賭博」も「ギャンブル依存症」の病名も無い! と指摘されています。また「はげひげ」のハンドルネームで盛んにブログを出しておられる、篠原菊紀氏(諏訪東京理科大学教授で脳神経科学がご専門)は「ギャンブリング障害」「遊技障害」という用語の使用を提唱しておられます。但し、正確にはギャンブリング・遊技「障害」と米国基準を翻訳すべきだけれども、「障害」という日本語にはなにかしら“差別的”なニュアンスも含まれてしまうので、むしろ『のめりこみ』と云う用語を今後一般的に使う方が良いのではないか? とも述べておられます。

そして1月27日付けで『パチンコ・パチスロのめりこみ対策私案(篠原)』というものを、ホームページ上に発表されておられます。
http://higeoyaji.at.webry.info/201701/article_17.html

大変優れたご見識だと感動し、我々業界人も“パチンコ障害”“パチンコ依存”ではなく『のめりこみ』という用語を、業界人全員で共有できればと感じます。なぜなら「ぱちんこ遊技機」「パチスロ遊技機」そのものに依存を起こさせる主原因が在る訳ではなくて、遊技者の発達の問題、生活態度、暮らしの現状などに依って「依存状態」に成る事が、臨床治療の現場から報告されているからです。

ホール業界の「のめり込み問題」に対する自発的取組をアピールするために…

❸ ところが、世間の流れにおいては、(反・受動喫煙運動)におけることと同じく、ぱちんこ店、ぱちんこ・パチスロ機そのものが「依存問題」を起こすもとになっている! との意見も根強く広がっています。この“世論”に対して、我々業界人が無関心で、「言いたいだけ言わせておけ」的な対応をとったままでは、いったいどうなって行くのでしょうか? いつの間にか“外堀”が埋められ、カジノと同列に扱われ、店内への「入場規制」の網にかけられてしまう惧れも無しとはしません!

篠原教授などは、ぱちんこ店で普及している「会員カード」に着目されます。「会員カード」を台のユニットに挿入してお客様がプレイされるかぎりは、個々の個人の遊技時間、投資金額、さらには“勝ち負け”までもがホット情報として、会員管理コンピュータに集計されて来るはずです。これは大変もの凄い「ビッグDATA」です。これを個々の営業所がデータ分析して当局に定期的に報告する仕組みができれば、『目に見えるカタチで』ホール業界の「のめり込み問題」に対する自発的取組がアピールできるはずです。

残念ながら、ホール営業の現実では、会員カードを挿入しての遊技比率が20%位ではないかと云われる事があります。これだけでも十分な量の分析データの集積に成りますが、今後この挿入比率を更にUPさせることで、より「のめりこみ問題」への対応が進むことに成ります。

❹ もし上記の様な対応に業界人が無関心のままでいたら、もしかしていずれ『タスポ』のようなカードをユニットに挿入しないと、遊技台が動かないようなシステムが導入されかねないことを大いに感じ取る必要が有ります。その場合は、遊技客全員が事前に『タスポ』のような個人情報が書き込まれたカードを作らないといけない事に成ります。

さあ、一刻も早く「電子認証システム協議会」を中心にして、業界人の自発的な、遊技客の実態調査に着手すべきかと思います。そして、“世間から”ああだこうだと言われる前に、目に見える統計データの推移でもって、「のめりこみ防止」の効果を提示する必要を、日に日に迫られているような気がしてなりません。

- 次回に続く -

カテゴリー: パチンコ,業界動向

メッセージを残す

メールアドレスが公開されることはございません。