過大評価になりがちな社内評価

ミステリーリサーチのすすめ 第5回

過大評価になりがちな社内評価

稼働の目減りが止まらない、問題点は何か?

あるホール企業の社長が頭を抱えていました。

「最近、頻繁に大量の新台入替やイベントを実施しても稼働の目減りに歯止めを打つことができなくなっている。メール、チラシ、雑誌広告などをはじめとする広告宣伝費をかけても一向によくなる兆しが見えてこない。これまでのやり方が悪いとは思わないが、きっと何かが足りないか、別の問題点があると思う。どうすればいいだろうか?」

この会社は現在5店舗のパチンコ店を経営していますが、社長が問題としているのはそのうちの2店舗です。両店舗は話題の新台ともなれば必ず1ブロックを一気に入れ替え、イベントによる盛況感も積極的に出し、商圏内では勝ち組のパチンコ店群に属していますが、稼働の目減りを止めることができないようです。

社長はさらに「これ以上の機械投入やイベントを行っても稼働が上がるように思えないし、他のグループ店にも経費の負担を負わせるわけにはいかない。店頭案内、店内演出、什器備品類、ツールなども本当は全面的に見直したいが、これらは随時必要に応じて進めることにして、次に考えられるサービスや接客レベルの向上を図りたい。だが、向上させると口で簡単に言ってはみても、かえって現場の混乱を招いたり、不満の原因となったりしてスタッフが何人も辞めたのでは、何をしているのか分からなくなる…。とりあえず何か手っ取り早く手が打てて、スタッフのモチベーションも上がるような対策はないだろうか?」と言います。

私は以前、問題の2店舗と、その競合店を視察したことがありました。確かに社長が言うように近隣競合店と比較して、機種構成、設備、案内告知、遊技演出、清掃、接客対応、景品ディスプレイなどは大まかに見る限りでは問題点を感じませんでした。

社長の話を聞きながら私は、同席していた部長や店長にヒアリングしようかとも思いましたが、問題点が分かっているなら既に対策を講じているはずなので、ここでは何も聞きませんでした。それに、このようなケースでは意外に自分たちの足元が見えていないことも少なくありません。「灯台下暗し」です。そこで一つ提案しました。弊社で用意した店舗チェック表を使い、社内の検証をお願いしたのです。

アルバイトスタッフの質問や意見を積極的に取り入れる

チェック方法は対象店舗の社員全員が自店と競合店をチェックし、次に、もう一店舗のグループ店とその競合店もチェックしました。集計は本部でまとめてもらったのですが、集計する数日間も対象となる店舗の社員には頻繁に競合店視察をお願いしました。

そして、その結果を元に両店舗でブレーンストーミング方式のミーティングを開いたのですが、ミーティングは活発に意見が飛びかうようなものではなく、競合店と比較して自分たちの出来ていないことを確実に実施していこうというごく当たり前の結論が出ただけでした。具体的には「通路清掃の徹底」や「あいさつするときはお客さまの目を見る」といったものです。

そこで、この計画をアルバイトスタッフに説明する段階で、従来とはやり方を大きく変えてみようと考えました。従来アルバイトスタッフにこうした計画を説明するのは、始業点呼もしくは終業点呼時の時間を割いて、会社側から一方的に伝えるだけでした。それを今後は点呼とは別に少なくとも30分の時間を取り、ミーティングルームでアルバイトスタッフの質問や意見を積極的に取り入れながら、説明することをルールとしてもらったのです。

このアルバイトスタッフへの説明ミーティングでは、両店とも驚くほど活発な意見交換がありました。アルバイトスタッフからの意見で一部計画の改善を行ったほどです。その後、これを機に朝礼や終礼でもスタッフの意見が活発に出るようになり、インカムからも元気な声が飛び交うようになりました。

さらに、私は朝終礼で出てくるスタッフからの意見を店長が直接聞き、良いと店長が判断したことはその場で決定するルールを作ってくださいとお願いしました。その結果、スタッフの意見を元に休憩室の清掃の問題、札の保管方法、お客さまの入場整理方法、交代時の通路清掃、閉店時の列整理、イベント企画などさまざまな改善が進められたようです。その後両店は、全スタッフが地域トップシェアを合言葉に、店長、社員、アルバイト全員が目標を一つにチャレンジし、稼働は回復していきました。こうした動きを受けてこの会社では他店舗でも新しい計画を説明するときは、全店でアルバイトスタッフへの説明ミーティングのための時間を取るようになり、朝終礼には店長が参加するようになりました。

社内評価だけでは見つからい問題点

それから約半年後、社長から再び連絡が入りました。「当初は店の活気も戻り、稼働も回復していたが、最近マンネリ気味となってきた」ということでした。すぐに両店の視察にうかがいました。両店ともお客さまの来店状況は良く、スタッフもキビキビと動いています。

店長に聞くと「アルバイトスタッフミーティング、朝終礼改善後は、スタッフからの意見が頻繁に出てきて、その場で決定してスタッフの雰囲気が良くなったものの、今は改善事項も一巡して、スタッフからの意見も出尽くした感じがします」とのことです。そこで競合店調査は実施していますかと尋ねると「継続して実施していますが、代わり映えしません、毎回同じような調査結果です」といいます。

そこで、社長と相談の上、ミステリーリサーチ(覆面調査)を実施することにしました。今回は調査員を4人だけにし、同社の調査における両店舗への評価との比較検討を主な目的としました。その結果、同社による評価とは異なる評価が出たのでした。もっとも特徴的な差異はお客さまへの接客対応項目でした。自店チェックでは接客対応はかなりの高得点ですし、他グループ店もこの店舗の接客対応項目に高得点をつけています。ところが、ミステリーリサーチでの評価は、競合店に劣ってこそいませんが、社内評価での得点ほどは高くありません。調査員の基準値が厳しいのかと言えば、競合店チェックの評価は調査員も社内評価もほぼ同じです。

社内評価の場合、このような過大評価となることが少なくありません。これは業績が上がった店にしばしば見られる傾向ですが、社内の評判で「○○店の接客は当社でトップだ」という先入観が調査担当者の客観的な判断を妨げ、実際よりも高い評価を付けさせるからです。

当事者では見えにくく、気付きにくいことがあります。そうしたことを経営のテーブルに載せて議論し、具体的な対策へつないでいくためには第三者の目が有効となってくることがあるのです。

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